理化学研究所などのチームが3日、スーパーコンピューター「富岳」を使い、オフィスなどにあるパーティション(仕切り板)が、せきで飛ぶ唾液(だえき)などのしぶき(飛沫(ひまつ))を防ぐ効果を解析したと発表した。仕切り板が顔の高さより低いと、効果が小さいと推定された。オフィスや飲食店での新型コロナウイルス対策の参考になりそうだ。
富岳は、計算速度世界一を記録したこともあるスパコン「京(けい)」の後継機。チームは、一般的な会社のオフィスで、一つの机に4人が2人ずつ向かい合うように座ることを想定。うち1人がせきをした場合、仕切り板の高さによって、せきのしぶきの動きがどう変わるか、シミュレーションした。密室内でエアコンの風がなく、室内の他の人の呼吸の影響も考えない、最もしぶきが広がりにくいケースを調べた。
2回の強いせきで、およそ1~数百マイクロメートルのしぶきが計5万個飛ぶとの条件で計算し、仕切り板の効果を調べた。すると、仕切り板がない場合、比較的大きなしぶきは、せきをした人のすぐ近くに落ちた。小さなしぶきは霧のようになって落下せず、正面の人の方に向かい、斜め前の人や、横に座った人の方にも広がった。
机に仕切り板がある場合、椅子に座った人の口ほどの高さにあたる、地面から120センチの板では、一部は止まるものの、小さなしぶきが、仕切り板の上を乗り越えて広がる様子が確認できた。一方、座った人の頭がほぼ隠れる、140センチの高さの板では、周りの人には、ほぼかかっていなかった。
理研の坪倉誠チームリーダーは「オフィスのパーティションは会話のために目が見える高さの場合が多いが、せきをした場合、10マイクロメートル以下の飛沫は空気の流れにのってパーティションを回り込み、相手にかかる。感染を効果的に防ぐには、最低、頭ぐらいの高さが必要だ」と話している。(杉浦奈実)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル